祈りを込めて

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この日は村人が共同で管理する池に魚を放流する儀式が行われていた。カンボジアの農村は豊かではない。米を作る傍ら近年魚を養殖する農家が増えてきた。魚は貴重なタンパク供給源。自分の家で消費する分は自給したいという人達だ。だが、自分の家に池を掘り水を張って魚を放つだけの余裕が無い農家も多い。村人が共同で管理する池に魚が増えれば、雨季に増水したとき、池の周辺の田んぼに魚が出て行き、魚が成長して繁殖し、村人が自由に魚を捕ることができる。

村人は魚が増えて、たくさん捕れることを祈り、池に魚を放流する。熱心な小乗仏教の国であるから、こうした祭事、式典のときには村長など村の有力者がお坊様を呼び、農作物の豊穣と魚の豊漁を祈る。皆厳かに熱心に祈る。大切な魚である。地域共同体である村社会が生きている。互助の精神と相互信頼関係で結ばれているのだろう。お年寄りから子供まで皆そこに集い、語らい、本当に嬉しそうに魚を池に放つ。村社会が一つの大きな家族のようでもある。だがこうした村社会はまだそう多くはないのだと思う。

カンボジアは1970年代のクメールルージュによる恐怖の時代を体験した国であるだけに、村社会が真にお互いの信頼関係を取り戻すまでには実はまだ時間が必要であるのかも知れない。私が訪れた村は状況が良い方であったのだろう。他の村では容易に他人を寄せ付けない雰囲気が漂う所もあり、また村人同士でも疎遠な所もまだあると聞く。本当に暗黒の時代が遠い過去のものとなり、人々の心から猜疑心や恐怖感といったものが消え、この村の人々のように平和で明るい日々を迎えることができることを願って止まない。希望を持って魚の成長を見守り、収穫ができるよう皆と一緒に手を合せた。
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