蛍便り

昨日弟からメールがきた。職場の帰りに蛍を見に行っていると書かれていた。なんとも風情のある便りだった。そこは大阪南部の山間部でカワセミやノウサギも棲息する自然豊かな所だそうである。私の知らない大阪だ。町工場と住宅地ばかりというのが私の大阪のイメージであったのだが。それにしても梅雨の季節の夜空を幻想的な光が舞うその光景は素敵であろう。種類はゲンジボタルだそうだ。

私は小学校低学年のとき、郡山の郊外にある小川でヘイケボタルの舞う姿を見て以来、全く見ていない。もう40年間も日本の蛍の光を見ていないのだ。あれは子供の頃の輝きだった。初夏の頃の夜、団扇を持って、私たち家族が住んでいた社宅にいた友達のお父さんが運転する車でよく蛍を見にいった。ヘイケボタルの光はゲンジボタルのものと比べれば弱く小さく、一瞬明るく輝いたと思ったら、すぐに寂しい光へと変化する。今思えば何とも言えず寂寥感を漂わせる美しく儚い光だった。飛んでくるその光に向って軽く団扇を振ると、団扇に蛍がくっつく。それをそっと取って金網でできた小さな虫かごに入れる。家へ帰る車の中で、蛍の光が十数個ついたり消えたり、とても優しく光っていたのを思い出す。

またあの光を見ることはできるだろうか。今年この季節に大阪南部の山間部では見ることができると分かっていても、今の私が暮らす環境には蛍はいない。今月から来月にかけて旅行をする時間もない。来年こそは再びあの神秘的な蛍の光を見てみたいと願わずにはいられない。

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