ラシオ温泉

ミャンマー北東部シャン州にラシオという地方都市がある。首都ヤンゴンからラシオまでは約1,700km離れている。飛行機で北部最大の都市マンダレーまで飛び、そこから車で山道を8時間走る。日光いろは坂よりも急なカーブが続く険しい道である。外国人が観光目的で訪れることができるのはこのラシオまで。そこから先中国との国境地帯は国境省が厳重に監視する外国人立入禁止地域である。ミャンマーはここだけではなく、国境を接するタイ、インド、バングラデシュ、中国、ラオスに近接する場所はすべて外国人の立入を原則禁止としている。国境省から特別の許可がない限りアクセス不可である。あまり知られていないが、ミャンマーの山岳地帯には標高5,000mを超える山もあり、ここも外国人には制限されている。ラシオでさえ用務で行く場合は、管轄省庁へ訪問予定日の2週間前までに公式レターで依頼し、許可を得なければならない。

今回はヤンゴンから医師、理学療法士20名に同行し、地域巡回診療の様子を見るのが目的であった。朝5:30にヤンゴンのホテルを出発したのに、途中休憩の時間もあったが、目的地に到着したのは夜9:30を過ぎていた。この日は移動だけ、翌日は朝からほぼ終日地域にある拠点病院で約400名の患者さんの診察と治療だった。夕刻それが終わってから、近くに温泉があるという話を聞き、行ってみた。

驚いたことに、川がまるごと温泉だった。湯に手を入れると結構熱い。41-42℃くらいと思われる。何も書かれたものがないので効能などは全く分からない。現地の人は日本人とは違って裸で入浴をしない。伝統の服(男性もスカートのように巻いてはく)のまま入浴する。おそらく普段着用と入浴用とは別になっているのではないかと思うが。天然の川であるため、整地されておらず、ぬるぬるとした藻のようなものが生えているところもあり、足元は結構危ない。太平洋戦争時、旧日本兵がラシオからマンダレーに近いメイミョーという所まで延々と山道を敗走したらしいが、途中このラシオのような温泉を見つけ、ひと心地つけたのだとか。このラシオからメイミョーまでの道は途中負傷やマラリアなどの病気で亡くなった旧日本兵の死体でいっぱいになったらしく、白骨街道と呼ばれたそうだ。

盲腸による腹部の痛みと発熱が続いていた私であったが、温泉に入ってみた。やはり私は日本人であった。仏様が力を貸してくれたのか、少し生き返った気がした。旧日本兵のその時の気持ちも分かったような気がした。日が没するのを眺めながら、遠い祖国に想いを馳せた。
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