驚きの警察

さて、前回のベナンの話の続きである。帰国間際に財布を落としてしまった私は意気消沈している場合ではなかった。クレジットカードやキャッシュカードの悪用を防止するために日本のクレジット会社や銀行に国際電話をかけ事情を説明してそれらのカードの使用中止手続きをとる一方、現地の警察で「紛失証明書」を発行してもらう必要があると思った。

財布紛失に気がついて1時間後にはコトヌーの中央警察署へ向かっていた。日本と違い町の方々に派出所や警察署があるわけではないので、事務所から遠くても中央警察署に足を運ばなくてはならないのだ。正面入口に到着した時、ある種異様な雰囲気に包まれた。広い敷地に大きな建物。いかにも中央警察といった感じであるが、正門前に大勢人がおり、人だかりの真ん中で大声でわめき散らしている女性がいた。通訳の話によると、正気ではないらしく、警察に対する暴言を繰り返しているとのことであった。

人だかりの間をぬうようにして警察の敷地内に分け入った。真っ先に目に飛び込んできたのは広い赤土の敷地を囲むようにそびえる庁舎の正面中央に縦横枡の目状の鉄格子がかかった倉庫のような大きな部屋である。上半身裸の男たちが内側から鉄格子につかまり、うつろな表情を浮かべてこちらを見ている。随分と沢山いる。あれは何かと訊ねたところ、留置場とのこと。外気に吹きさらしで虫もねずみも出入り自由、外部からまる見えで、人権など感じられない。取り調べのための留置場とのことで、必ずしも罪が確定した人たちではない。これは驚きの光景であった。実は以前同僚がこの国で仕事をしに来た時に滞在していたホテルでパソコンや財布等を盗まれた際、警察に届けたところ、ホテルの従業員全員がこの留置場に1-2日間放り込まれて取り調べを受けたという話を聞き、二度びっくりした。

どこで紛失届を受け付けてくれるのかと聞き、指差されたところへ行き、事情を説明した。警察官は事務的に何事かノートにメモをとった後、次の部署へ行けとまた別の部署を指差され、そこへ行くとまた一から同じことを説明し、ノートに記録され、さらにまたもう一か所と計3箇所で同じ供述をし、同じことを繰り返した。随分と要領と効率が悪い。ようやく終わりかと思ったところ、紛失証明書を作成するのに数日かかると言われた。翌日に帰国を控えていたので、すぐに頼むと言ったところ、お金を要求された。安くはない金額で、その領収証はくれない。不機嫌そうな年配の婦人警察官が慣れない手つきでタイプライターを打っているところにお金を受け取った若い警察官が「急ぎで頼む。」と言ったのだと思うが、その婦人警察官は横目で私たちを睨んだだけで、「今はダメ!」と言った調子で手を横に振った。お金を受け取った警察官は他のタイプ打ちに駆け寄り、ようやく紙を一枚タイプしたものを持って出てきた。警察署に入ってから3時間が経過していた。

私は疲れ切っていた。

この記事へのコメント

リクリク
2012年03月17日 03:11
紛失証明書発行は、紛失場所のCommissaire de policeへ行けば、わりと早くできる。担当者ではなく、警察署の一番偉い人に、直接話すのが重要です。アフリカでは
Commissaireといえば警視のことです。場所によっては
Directeure de la policeとも云う。

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