玉葱とパン

さて、今晩何を食べようか、と思って寄宿舎の部屋の小さな冷蔵庫を開けたら、固くなったパンと玉葱、しなびた胡瓜があった。どれも先週研究所の職員が最寄りの町まで買い物に連れていってくれた時に買ったものである。日本から少しばかり持ってきた乾麺も残り少なくなってきたことだし、今晩は玉葱とパンを食べることにした。

玉葱は便利な食べ物だ。一週間放置していても大丈夫。これをどうやって食べようか一瞬頭を悩ませたが、選択肢があるわけではない。かつをぶしと醤油があれば最高なのだが、生憎持ってきていないので、そのまま茹でてかじることにした。ほのかな甘みがあって旨い。同じくその町で苦労して見つけたウオッカをコップ一杯の水と混ぜ、玉葱をかじる。とても旨い。何しろ一週間に一度買い物のチャンスがあるか無いかなので、食料品は貴重だ。ウオッカも1日一杯と決めている。ほろ酔い加減で玉葱をかじれば、固いパンやしなびた胡瓜が豪華な料理に思えてくるから不思議だ。

30年近く前の学生時代を思い出す。親戚の家を離れておんぼろ下宿に一人暮らしをした頃のことである。面倒であったが自炊をしていた。畳半畳ほどの流しがついていて、そこで胡瓜やキャベツを切った。時には肉も炒めた。近所にスーパーがあったからまだ良かった。あの頃を思い出す。もう30年近くも過ぎているかと思うと人生は短い。記憶の中ではついこの間のことのようだから。

今いる研究所から歩いて行ける範囲に店やレストランは無い。部屋には炊事台もない。考えてみれば学生時代の下宿よりも過酷ではある。生に執着があればかなりしんどい場所かも知れないが、生きるために食べるというサバイバルのような感覚にもなれない私には丁度良いのかも知れない。

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